おもいださない。おもいだせない。
闇に病む。
患ってた時代の記憶。
なぜか鮮明。
修学旅行も、高校生活も、学生生活も、結婚式の日も。
びっくりするほど覚えていないのにね。
アルバムを見返していても。
「わぁ」
って、蘇る記憶はひとつもなく。
ただ、画像としてページをめくるだけ。
「なつかしい」
と感じるのは、周りのヒトたちやファッションや風景を見て、時代を感じるから。
患ってた時代。
処方された薬の種類や。
待合いにいる同じ病の人間のうつろな目や。
あの日に聞いた誰かの叫び声や。
担当医の無気力な表情や。
沸き上がる死への欲望や。
副作用で動けないカラダを丸めて、痩せていく傷だらけの手首を眺めていた記憶は。
異常なくらい鮮明で。
何に対してか分からない恐怖や不安。
生きていてはならないと耳元でささやく何か。
負で不で。
そんな時期の記憶だけは、なぜシロクロのクセに鮮明なのだろう。
「隣り合わせ」
これがキーワードなのかもしれない。
白か黒か。
0か100か。
今のあたしの内容。
極端な性質。
欲望に正直で。
とたんに、シャットダウン。
中途半端な記憶はすべて0に。
強烈な記憶のみがあたしに残る。
思い出から、満たされるなんて。
ないん。
「あの頃はよかった」
って、なに?
あの頃がすべて繋がって。
今を生きてる。
あの頃の強烈で鮮明な出来事が、今(みんなが見ている)のあたしをつくってる。
あの頃の出来事を吹聴することなく笑ってる。
きっと誰かも、強烈で鮮明な負を出来事として抱えながら笑ってる。
笑ってるってことは。
少なからず
「その出来事をやっつけた」のか。
「その出来事を忘れずに背中に背負ってる」のか。
「その出来事をあきらめて手のひらであたためている」のか。
だから、やんわりと、笑えてる。
やんわりと、笑うのよ。
におい。
するよ。
やんわりと笑うヒトのにおい。
探してしまう。
というよりは。
見つけてしまう。
やんわりと笑うヒト。
まっすぐでまっしろなヒトが、眩しくて直視できない人種。
まぁ。
ひねくれてるだけなんだけどね。
傷を舐め合うわけでなく。
傷を見せ合うこともせず。
ただ、100の欲と0の無関心さに。
溺れてみたい。
「隣り合わせ」な欲望と。
「隣り合わせ」な記憶。
極端なあたし。
今夜もミモダエテる。